高血圧について
あなたの血圧はコントロールされていますか?
日本での高血圧の方は約4,300万人いると推定されています。その中で適切に血圧がコントロールされているのはわずか1,200万人で、約3,100万人が管理不良と考えられております。そのうち、高血圧を認識していない人が1,400万人、認知しているが未治療の方が450万人、治療を受けているが管理不良の方が1250万人と推定されています。
一般に血圧は、高齢になるほど高くなる傾向があります。しかし、日本では、30歳代、40歳代の比較的若い世代でも、すでに2~3割の人が高血圧の状態です。しかもこの世代の場合、80~90%もの人が治療を受けていません。高血圧を長期間放置していると、それだけ血管の傷みも進み、いきなり脳卒中や心筋梗塞を起こしかねません。若い世代は、食生活の改善など生活習慣を見直すことで血圧を下げやすいので、早めに受診して医師の指導を受けるようにしましょう。
高血圧の診断
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」より、血圧に基づく高血圧の基準は以下のように決められています。
分類 |
診察室血圧 (mmHg) 収縮期 / 拡張期 |
家庭内血圧 (mmHg) 収縮期 / 拡張期 |
正常血圧 |
<120 かつ <80 |
<115 かつ <75 |
正常高値血圧 |
120~129 かつ <80 |
115~124 かつ <75 |
高値血圧 |
130~139 かつ ⁄ 又は 80~89 |
125~134 かつ ⁄ 又は 75~84 |
Ⅰ度高血圧 |
140~159 かつ ⁄ 又は 90~99 |
135~145 かつ ⁄ 又は 85~89 |
Ⅱ度高血圧 |
160~179 かつ ⁄ 又は 100~109 |
145~160 かつ ⁄ 又は 90~100 |
Ⅲ度高血圧 |
≧180 かつ ⁄ 又は ≧110 |
≧160 かつ ⁄ 又は ≧100 |
孤立性収縮期高血圧 |
≧140 かつ <90 |
≧135 かつ <85 |
正常血圧とは、120/80mmHgのことをいいます。
正常高値血圧(120-129/<80mmHg)や高値血圧(130-139/80-89mmHg)というのは、高血圧の診断までは至っていませんが、「高血圧の一歩手前で、注意が必要なレベル」という意味で、高血圧予備軍の段階です。高血圧治療ガイドライン2019では、『120/90mmHg以上であれば心血管リスクが上昇すると考えられており、血圧管理の対象である』と言われています。また、血圧が高くなるほど、脳卒中や心筋梗塞、慢性腎臓病にかかるリスクが高くなると言われています。
また、(孤立性)収縮期高血圧とは、収縮期血圧(高いほうの血圧)だけが特に高いもので、動脈硬化の進んだ高齢者に多くみられます。
高血圧の種類
【白衣高血圧】と【仮面高血圧】
『家では血圧がいいのに…病院に来ると血圧が高くなるのです。』と感じられた方はいませんか?血圧にも色々な種類があります。
白衣高血圧;家庭での血圧は135/85mmHg以下で管理されているのに、病院に来られた際は140/90mmHg以上になってしまうパターン。
診察室血圧で高血圧と診断された患者さんの15-30%を占めており、高齢者で割合が増えると言われています。非高血圧(正常血圧、正常高値血圧、高値血圧)の方と比べて、将来的に脳血管イベントリスクが高いと言われており、持続性高血圧症(診察室血圧および診察室外血圧がともに高血圧と診断される状態)に移行するリスクが高いと言われています。
高血圧の評価は病院での血圧より家庭での血圧が重要となってくるので、基本的には薬物治療は行わないのですが、注意深くフォローしていきます。
仮面高血圧;病院での血圧は140/90mmHg以下であるのに、家庭血圧は135/85mmHg以上になってしまうパターン。
非高血圧の方の10-15%にみられ、降圧治療中の高血圧患者の9-23%にみられると言われています。持続性高血圧症と脳血管イベントリスクは同程度と言われており、高血圧と考えて対応します。
仮面高血圧になりうる病態(時間)とその要因
1)早朝に高血圧となる状態(早朝高血圧)
原因;アルコール、喫煙、寒冷、起立性高血圧や持続不十分な降圧剤の影響と言われています。
2)昼間に高血圧となる状態(昼間高血圧)
原因;職場や家庭での精神ストレス、身体的ストレス
3)深夜にも血圧があまり下がらず、早朝になるとそのまま持続して高くなるタイプ(夜間高血圧)
原因;体液が多くなりやすい病態(心不全、腎不全など)、自律神経障害(起立性低血圧や糖尿病)、睡眠時無呼吸症候群、抑うつ状態、認知機能低下、脳卒中など
睡眠中にも心臓や血管に負担がかかるため、心疾患を起こすリスクが高いので危険です。
***1日の血圧の推移***
私たちの血圧は、睡眠中の深夜に最も低くなり、早朝からは活動の準備のために少しずつ上昇しはじめます。(睡眠時の血圧が、目覚めたときの血圧の約10-20程度下がっているのが良いと言われています)
家庭血圧測定のススメ
家庭血圧の測定には、次のようなメリットと役割があります。
- 時間を決めて毎日同じ条件で、また安定した状態で測定できるので、より正確で詳細な血圧情報を把握することができます。
- 測定値を記録しておくことで、自身の健康管理の目安となります。また、医師にとって重要な診断材料となります。
- 病院では把握しにくい白衣高血圧や仮面高血圧を診断する貴重な情報となります。
- 服薬治療中には、薬の持続時間や効果を評価する資料となり、医師の治療方針の助けとなります。
家庭血圧の測定方法
朝:起床後1時間以内で。トイレをすまして、朝の薬を飲む前に、座った姿勢で1〜2分間安静にした後
晩:就床前(飲酒や入浴の後)、座った姿勢で1〜2分間安静にした後。入浴後1時間以上時間をあけて測定しましょう。
※1日1回であれば、朝に測定しましょう。
★腕での血圧測定のポイント
手首での測定のポイント